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コラム

2022年05月21日品種特性

単為結果性 -持続可能な農業生産を支えるツール-

みなさん初めまして。園研のトマト担当の角田と申します。私の担当するコラムでは、主にミニトマトの特性や育種に関する情報を発信していきます。お付き合いよろしくお願いします。というわけで、今回のコラムでは、園研のミニトマト品種の最大の特徴である「単為結果性」についてご説明させていただきます。

さて、みなさんは小学生のときに「めしべに花粉がついて実ができる」ということを習ったことを覚えていらっしゃるでしょうか?

この大前提とは異なり、単為結果性を持つ植物では、受粉や受精をしなくて果実が形成されます(図1)。トマト以外では、ナスやキュウリでこの性質が広く利用されています。単為結果性を持つ品種は、通常の品種では、果実が生産できないような環境条件下でも、安定した果実生産を可能にします。

一般的なトマトの施設栽培では、咲いた花が確実に実を付けるように、訪花昆虫(マルハナバチ)による受粉や、人の手による着果ホルモン剤処理が行われています。訪花昆虫に利用にあたっては、様々な法的な規制があり、ホルモン剤の処理は薬液を数日おきに花房にだけスプレーする(成長点に付着すると薬害が生じるため)必要があります。これらの処理はいずれも生産者にとって、コストや労力がかかるものです。一方で、単為結果性の品種であれば、これらの処理を必要とせず勝手に実がなるので、コストや労力を減らすことが可能となります。

また、近年では、地球温暖化の影響で天候不順となり、極端に暑くなったり寒くなったりすることが多くなっています。単為結果性を持たない品種では、このような条件下では、花粉の能力が低下するとともに、マルハナバチの活動も低下し、花が咲いても着果しにくくなります。しかし、単為結果性品種であれば、受粉しなくても着果するので、花粉の能力や、訪花昆虫の働きを気にかける必要はありません。実際に、園研の単為結果性ミニトマト品種を栽培されている生産者さんからは、高温期や低温期にも安定して着果すると好評を得ています。

農業従事者の減少や高齢化が問題となっている昨今、作物生産の省力化を可能とする単為結果性品種は、持続可能な農業生産を支えるうえでますます重要なツールの一つとなると考えています。

角田鈴奈

著者プロフィール

名前
角田鈴奈
出身地
群馬県館林市
専門分野
植物育種(トマト)、ちょっとだけ分子遺伝学
趣味
釣り、登山、ヨガ、旅行
好きなもの
柑橘、和栗、クレープ

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